現場DX実例

【工場の現場改善事例】部品確認のムダをIoTで自動化した実践例

工場の現場では、「部品を取りに行く」という何気ない行動が、実は大きなムダになっていることがあります。
私の現場でも、2Fの作業エリアから1Fの部品置き場へ何度も確認に降りるという非効率が発生していました。

最初は見守りカメラを使って解決を試みましたが、思わぬ課題が浮上します。
そこで発想を転換し、Raspberry Piを活用して「部品が準備されたことを自動検知し通知する仕組み」を構築しました。

本記事では、実際に現場で試行錯誤しながら作り上げた工場改善事例として、

・なぜムダが発生していたのか
・最初の失敗から何を学んだのか
・どのような仕組みで解決したのか
・導入してどう変わったのか

を具体的に解説します。

「小さなムダをなくしたい」「IoTで現場改善をしてみたい」と考えている方の参考になれば幸いです。

なぜ部品を取りに行くムダが発生していたのか

まずは、なぜ部品を取りに行くムダが発生していたのか、その背景から整理します。
問題の本質は「移動」そのものではなく、「確認のためだけの移動」にありました。

2F作業エリアと1F部品置き場の構造的問題

私の現場では、作業エリアが2Fにあり、部品置き場は1Fにあります。
仕事が入ると、まず2Fから1Fへ降りて必要な部品を取りに行くところから作業が始まります。

通常であれば問題ありませんが、部品の準備が完了していないタイミングで取りに行ってしまうことがありました。その場合、2Fへ戻り、再度時間をおいて1Fへ確認に行く必要があります。

つまり、

「部品があるかどうか確認するためだけに階段を往復する」

という行動が発生していました。

この構造自体が、ムダを生みやすい環境だったのです。

週400件の仕事の中で起きていた確認ロス

私の現場では、1週間に約400件の仕事があります。
その中で、部品が準備されていないタイミングに当たるケースは平均して週5回程度、多いときには10回以上ありました。

1回の確認往復にかかる時間は約4〜5分かもしれません。しかし、

  • 階段の昇降
  • 部品置き場までの移動
  • 再度戻る移動

これが積み重なると、決して無視できないロスになります。

週によってバラツキはありますが、1週間で約25分、
1年間で約20時間のロス時間になります。

20時間ということは約2.5日分、
つまり「ほぼ3日間、何も生産していない時間」が発生していた計算になります。

さらに、作業のリズムが中断されることで、集中力の低下にもつながっていました。

小さなムダが積み重なる現場の現実

1回あたりのロスは小さくても、積み重なれば大きな時間になります。

しかし現場では、「仕方ない」「タイミングが悪かっただけ」と流されがちです。
私も最初はそう考えていました。

それでも、

「2Fから1Fへ降りなくても、部品が準備されているか分かる方法はないだろうか?」

と考え始めたことが、今回の工場改善事例の出発点です。

ムダの本質は、「移動そのもの」ではなく、「確認のためだけの移動」でした。

「確認のための移動」は当たり前になっていませんか?

この“確認ロス”をなくすことができれば、現場はもっと効率的になると感じたのです。

最初の挑戦|見守りカメラでの確認方法

確認のためだけに1Fへ降りるムダをなくすため、最初に思いついたのは「カメラで状況を見ればいいのではないか」という方法でした。
できるだけ簡単に、できるだけ低コストで試せる方法を選びました。

ペット用カメラを選んだ理由

導入したのは、市販のペット用見守りカメラです。

  • 価格が手頃
  • Wi-Fi接続が簡単
  • スマホでリアルタイム映像を確認できる

特別な工事も不要で、すぐに試せる点が魅力でした。

「まずはやってみる」という気持ちで設置しました。

実際に設置してみた結果

1Fの部品置き場にカメラを設置し、2Fからスマホで映像を確認できる環境を作りました。

理論上は、部品が置かれていれば画面で確認できるため、無駄な移動はなくなるはずでした。

しかし、実際に運用してみると問題が見えてきます。

細かい部品が確認できない問題

部品は小さく、箱や袋に入っているものも多くあります。
カメラ越しでは細部まで判別することが難しく、「本当に準備されているのか」が曖昧でした。

さらに、

  • スマホを開く手間が発生する
  • 結局見に行ったほうが早いと感じる場面がある
  • 現場の人が常に映されることへの抵抗感

といった問題も浮上しました。

つまり、「見えるようにする」だけでは、確認ロスは完全には解消できなかったのです。

ここで気づいたのは、
問題は“見えないこと”ではなく、“確認行為そのものが必要なこと”だったという点でした。

現場から出た2つの課題

見守りカメラの導入により、状況を“見る”ことは可能になりました。
しかしテスト運用を続ける中で、本質的な課題が見えてきました。

それは、技術的な問題というよりも「人」と「運用」に関わる問題でした。

「監視されている」という心理的抵抗

カメラを設置したことで、一部の現場メンバーから

「監視されているようで落ち着かない」

という声が上がりました。

もちろん目的は監視ではなく、部品の準備確認です。
しかし、カメラという存在自体が心理的な圧力になる場合があります。

工場改善は効率だけを追えば良いわけではありません。
現場の納得感がなければ、長く続く仕組みにはならないと実感しました。

この心理的な部分について、皆さんの現場でも少なからずあるのではないでしょうか?

画像を“見なくなる”という運用上の問題

もう一つの課題は、運用面でした。

当初は「カメラで確認すれば移動は減る」と考えていましたが、実際には

  • スマホを開く手間がある
  • 作業の流れが止まる
  • 画面を確認する習慣が定着しない

といった問題が発生しました。

結果として、「結局見に行った方が早い」という状況が生まれてしまったのです。

確認行為が自動化されていないことが本質

ここで気づいたのは、カメラの問題ではなく、

「確認する」という行為自体が手動であること

が根本原因だということでした。

  • 人が画面を開く
  • 人が映像を確認する
  • 人が判断する

このプロセスが残っている限り、ムダは完全にはなくなりません。

必要だったのは、「見に行く」仕組みではなく、

「準備ができたら知らせる」仕組み

だったのです。

ここから、改善の方向性が大きく変わりました。

再検討|本当に必要だった仕組みとは

見守りカメラの導入を通して分かったのは、「見える化」だけではムダはなくならないということでした。
必要だったのは、“確認する仕組み”ではなく、“確認しなくていい仕組み”だったのです。

ここから、改善の方向性を根本から見直しました。

「見に行く仕組み」から「知らせる仕組み」へ

これまでの発想は、

  • 部品があるかどうかを確認する
  • そのために映像を見る

という「確認前提」の仕組みでした。

しかし本来あるべき姿は、

  • 部品が準備できたら
  • 自動的に分かる

という状態です。

つまり、

「確認する側」が動くのではなく、
「準備が完了した側」が合図を出す仕組み

に変える必要がありました。

改善の条件を整理する

再検討する中で、次の条件を明確にしました。

  1. 現場の心理的負担がないこと
  2. 誰でもすぐ理解できること
  3. 確認行為が発生しないこと
  4. できるだけ低コストであること

この4つを満たす仕組みでなければ、継続運用は難しいと判断しました。

改善は「理想的」よりも「続けられる」ことが重要です。

シンプルな方法に立ち返る

高度なシステムではなく、もっと単純な方法はないか。

そこで目を向けたのが、

「状態を一目で分かるようにする」

という原点でした。

スマホを開く必要もなく、
誰かが監視されることもなく、
特別な操作も不要。

2Fにいながら、1Fの状態が直感的に分かる仕組み。

その答えは、「状態変化を検知して通知する」という極めてシンプルな仕組みでした。

次章で、実際に採用した具体的な改善方法を紹介します。

Raspberry Piで構築した検知システム

カメラで“確認する”方式がうまく機能しなかったため、発想を転換しました。

必要だったのは、

「映像を見ること」ではなく
「部品準備が完了した瞬間を自動で知ること」

そこで採用したのが、Raspberry Piを使った簡易検知システムです。

スターターキットでの試作

まずは小規模に試せるよう、スターターキットを使って構築しました。

raspberrypi4Bスターターキットの画像
raspberrypi4Bとカメラモジュールの画像

使用したのは
Raspberry Pi Ltdが開発しているRaspberry Pi 4Bです。

選定理由は次の通りです。

  • 小型で設置しやすい
  • 価格が安い
  • 画像処理が可能
  • 拡張性が高い

本格的なFA機器ではなく、
“まずは動かしてみる”ことを優先しました。

購入金額としては、約25,000円程かかりました。

  • Raspberry Pi 4B スターターキット:約20,000円
  • カメラモジュール:約2,000円
  • 固定用のステー部材:約1,000円(工場にあった部材を使用)

1年間で約20時間のロス削減を考えると1年未満で十分に回収できる金額でした。

画像からスペース消失を検知する仕組み

今回のポイントは、
部品そのものを認識するのではないという点です。

やったことはシンプルです。

  • 1Fの「部品置き場」を定点撮影
  • 指定エリアの画像差分を取得
  • 「部品が置かれて空間が埋まった」状態を検知

つまり、

「部品がある」ことではなく
「空きスペースが消えた」ことをトリガーにしました。

この方法により、

  • 誤検知を減らせる
  • 細かい部品形状に依存しない
  • 照明変化の影響を受けにくい

というメリットが得られました。

2Fへ通知する構成

検知後は、2Fへ通知が届くように設定しました。

構成は以下の通りです。

1F
Raspberry Pi(カメラ付き)

Wi-Fi経由で信号送信

2F側の端末へ通知表示

通知はシンプルに

「部品準備完了」

と表示されるだけです。

ここでも重要なのは、

“見に行く”のではなく
“自動で知らせる”こと

でした。

実際の設置イメージ

設置は1Fの部品棚上部に固定し、
撮影範囲を限定しました。

部品確認用のカメラを設置するイメージ画像
部品確認の設置イメージです
  • 撮影範囲は最小限
  • 人の顔は映らない
  • 作業者を監視しない構図

これにより、

カメラ導入時に問題になった
「監視されている」という心理的抵抗も解消できました。

この仕組みにより、

  • 確認のために1Fへ降りる回数
  • スマホで映像を確認する手間
  • 無駄な往復時間

を削減する基盤が整いました。

少し技術的な内容として、プログラミング言語は
python、画像処理はOpenCVを使用して構築しました。

私自身プログラムの知識が乏しいのですが、
AIに質問しながら作っていきました。

本当のところは、カメラで撮影した画像に
ARマーカーという技術を使用して作成したかったのですが、
今回は断念してしまいました。

完璧を目指さず、まず動かしてみるという事を優先しました。
(もう少し勉強して再トライしたいです!)

導入して分かった効果と今後の展望

Raspberry Piによる自動検知システムを導入したことで、
現場の動きは明確に変わりました。

ここでは、実際に得られた効果と、今後の展開について整理します。

2Fから1Fに降りる回数の削減

最も大きな変化は、無駄な往復の削減です。

これまでは、

  • 「そろそろ準備できているかも」
  • 「確認しておこう」

という“予測”で1Fへ降りていました。

しかし現在は、

通知が来たときだけ動く

という明確なルールに変わりました。

結果として、

  • 不要な移動がゼロに近づいた
  • 作業の中断回数が減った
  • リズムが崩れなくなった

小さな改善ですが、積み重なると大きな時間差になります。

現場の心理的負担の軽減

今回の改善で意外に大きかったのが、心理的な変化です。

  • 監視されている感覚がない
  • 誰かを疑う仕組みではない
  • シンプルで分かりやすい

改善は「正しいこと」でも、
現場が納得しなければ定着しません。

そういう意味では、最初に見守りカメラを設置したことで、
得られる事があったと感じています。

今回の仕組みは、

人を管理するためではなく
作業を楽にするための仕組み

として受け入れられました。

これが定着につながった最大の要因です。

改善は「小さなムダ」から始まる

今回のテーマは、

「部品を取りに行くムダ」

という、一見すると小さな問題でした。

しかし、

  • 1回の移動は数分
  • 1日では何度も発生
  • 1年では膨大な時間になる

小さなムダほど、
誰も問題視せず放置されがちです。

ですが、

小さなムダこそ、改善しやすい

今回のように、

  • 高額な設備投資をせず
  • 身近なデバイスを使い
  • 現場目線で設計する

それだけでも十分に成果は出せます。

私が改善した事例は、
大規模なDXではありません。

ですが、

「確認を自動化する」

という視点を持つだけで、
現場の効率は確実に変わります。

今回の仕組みは、センサーやPLCを使わなくても構築可能な点が大きな特徴です。
小規模現場でも再現できる改善であることが重要でした。

まとめ:今回の工場改善事例から学べること

今回の改善は、
決して大掛かりな設備投資ではありません。

高価なFA機器を導入したわけでもなく、
大規模なシステム開発を行ったわけでもありません。

使ったのは、
小型コンピュータとシンプルな発想の転換だけです。

大規模投資ではなく、現場レベルで実装できる改善。
それが私なりの“無理しない現場改善”です。

■ 改善の本質は「確認の自動化」

今回のポイントは、

「見に行く」から
「知らせてもらう」へ

という発想の転換でした。

問題は“距離”ではなく、
確認行為が手動だったことにありました。

確認を自動化すれば、

  • 無駄な移動はなくなる
  • 作業の集中が途切れない
  • 心理的なストレスも減る

改善は、難しいことをする必要はありません。

■ 小さなムダは改善の宝庫

「部品を取りに行く」という行動は、
現場では当たり前になっていました。

だからこそ、誰も疑わなかった。

しかし、

  • 1回は数分
  • 1日では何度も発生
  • 年間では大きなロス

小さなムダは、
積み重なると大きな損失になります。

そして同時に、

小さなムダは、改善のチャンスでもある

ということが分かりました。

■ IoTは“難しいもの”ではない

IoTやDXという言葉を聞くと、

  • 難しそう
  • コストがかかりそう
  • 専門知識が必要そう

という印象を持たれがちです。

ですが今回の事例は、

  • 市販のデバイス
  • シンプルな画像検知
  • 最小限の通知機能

これだけで成立しています。

重要なのは、

「何を自動化すべきか」を見抜く視点

です。

最後に

現場改善は、
派手な改革から始まるものではありません。

ほんの小さな違和感に気づき、
仕組みに置き換える。

その積み重ねが、
大きな効率化につながります。

今回の改善事例が、
あなたの現場改善のヒントになれば幸いです。

また、「設備の状態を見に行くムダ」を削減した改善事例として、表示灯をM5Stackで遠隔監視した実践例もあります。表示灯の色を検知して状態をデータ化する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

▶ 表示灯を遠隔監視する方法|M5Stackで実現した工場の現場改善事例

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