工場で設備の状態を確認するために、表示灯を見に行く。
それが当たり前になっていました。
私の職場では、設備が別の建屋にあり、表示灯を確認するだけでも数分の移動が必要でした。「ちょっと見てくるか」と軽く歩き出すその時間が、1日に何度も積み重なっていきます。
正直に言えば、大きな不満があるわけではありません。
でも心のどこかで、「これ、行かなくても分かる方法はないのか?」と感じていました。
そこで取り組んだのが、表示灯の遠隔監視です。
特別なシステムや高額な設備ではなく、M5Stackと光センサを使った、現場で無理なく始められる方法を選びました。
この記事では、
- なぜ表示灯の遠隔監視が必要だと感じたのか
- M5Stackを使った具体的な仕組み
- 実際に導入して感じた効果と注意点
を、実体験ベースで紹介します。
「設備を見に行くムダ」を少しでも減らしたいと考えている方のヒントになれば嬉しいです。
なぜ表示灯の遠隔監視が必要だったのか
設備の状態を示す表示灯は、現場ではとても重要な情報源です。
緑・黄・赤といった色を見るだけで、稼働状況や異常の有無が一目で分かります。
しかし、その情報を得るために「わざわざ見に行く必要がある」という点に、私は少しずつ違和感を覚えるようになりました。
建屋が分かれている工場の課題
私の職場では、対象となる設備が別の建屋に設置されています。
事務所や自分の持ち場からは、直接表示灯を見ることができません。
そのため、
- 設備が正常に動いているか
- 異常停止していないか
- 作業が完了しているか
を確認するには、実際にその建屋まで移動する必要がありました。
距離としては決して遠すぎるわけではありません。
しかし、天候や他の作業状況によっては、それが地味に負担になっていました。
表示灯を確認するためだけのムダ移動
表示灯を確認するだけの移動。
時間にすれば1回あたり数分です。
ですが、
- 1日に何度も確認する
- 「念のため」の確認が増える
- 別の作業を中断して移動する
こうした積み重ねが、じわじわと効いてきます。
移動して確認し、問題なければそのまま戻る。
その繰り返しに、大きな達成感はありません。
「必要なこと」ではあるけれど、
本当にこのやり方しかないのだろうか、と考えるようになりました。
「行かなくても分かる」仕組みが必要だった理由
表示灯は、もともと“その場で見るため”の仕組みです。
しかし、IoTという言葉が広がる中で、私はこう思いました。
“色が分かればいいだけなら、遠隔でも確認できるのではないか?”
映像を常に監視する必要はありません。
複雑なデータ分析も不要です。
知りたいのは、
- 今、動いているか
- 異常が出ていないか
それだけでした。
大がかりなシステムを導入するのではなく、
まずは「表示灯を遠隔監視できる仕組み」を小さく作れないか。
こうして、今回の現場改善が始まりました。
表示灯の遠隔監視を実現する方法を検討した
表示灯を遠隔監視したい。
そう考えたとき、まず悩んだのは「どうやって実現するか」でした。
世の中にはさまざまなIoT製品や監視システムがあります。
しかし、工場全体を刷新するような大規模投資は現実的ではありません。
今回の目的はあくまでシンプルです。
- 表示灯の色が分かればいい
- 異常があればすぐ気づければいい
- 現場で無理なく導入できること
この条件を満たす方法を、順番に検討していきました。
最初に試した見守りカメラ構成
最初に思いついたのは、見守りカメラを使う方法です。
表示灯にカメラを向けて設置し、
スマートフォンやPCから映像を確認する。
仕組みとしては非常に分かりやすく、
導入のハードルもそれほど高くありません。
実際に市販のネットワークカメラを用意し、
表示灯が映る位置に設置して運用を試しました。
カメラ監視で分かったメリット
カメラ方式の良い点は、情報量が多いことです。
- 表示灯の色がそのまま見える
- 設備周辺の様子も同時に確認できる
- 設置すればすぐに使える
「とりあえず遠隔で確認できるようにする」という意味では、
非常に手軽な方法でした。
表示灯の遠隔監視としては、
もっとも直感的なやり方と言えるかもしれません。
台数が増えた場合の課題と限界
しかし、使い続けるうちに課題も見えてきました。
まず、台数が増えた場合の管理です。
設備ごとにカメラを設置すると、
- 機器コストが積み上がる
- 配線や電源確保が増える
- 映像を切り替えて確認する手間が発生する
という問題が出てきます。
また、常時映像を確認する必要があるため、
「見に行く」行為が「画面を見る」に置き換わっただけ、
という感覚もありました。
今回欲しかったのは、
映像ではなく「状態の通知」 です。
異常があれば分かる。
正常なら特に気にしなくていい。
そう考えると、カメラ方式は少しオーバースペックでした。
そこで改めて、
「表示灯の色そのものを検知できないか?」
という方向に考えを切り替えました。
M5Stackで表示灯を遠隔監視する仕組み
まず、PLC改造なしで表示灯の遠隔監視は可能です。
今回は配線工事などの変更も行なっていません。
(PLCとは設備の動きを制御する機械)
カメラ方式の課題が見えてきたとき、
私は「映像を見る」のではなく、「色を検知する」方向に考えを切り替えました。
表示灯は、赤・黄・緑などの色で状態を示します。
つまり、必要なのは色の変化を検知し、その情報を送る仕組みです。
そこで採用したのが、M5Stackと光センサを使った構成でした。
M5Stackとは何か
M5Stackは、ESP32を搭載した小型のマイコンボードです。
Wi-Fi通信が可能で、表示やボタン操作も備えています。
特徴は、
- コンパクトで扱いやすい
- Wi-Fi通信が標準で使える
- 拡張モジュールが豊富
という点です。
IoT用途として使いやすく、
プログラムを書けば比較的簡単にデータ送信ができます。
「表示灯の状態を別の建屋へ送る」という今回の目的には、
ちょうどよいサイズ感と性能でした。
光センサで表示灯の色を判定する仕組み
表示灯の色を検知するために使用したのが光環境センサというものです。
表示灯のすぐ近くにセンサを設置し、
受光した光の強さや色成分を読み取ります。
例えば、
- 緑が強ければ「正常稼働」
- 赤が強ければ「異常」
といった具合に、しきい値を設定して判定します。
映像を処理するのではなく、
数値データとして色を扱うため処理が軽く、構成もシンプルです。
これにより、表示灯の遠隔監視を
“状態のデータ化”という形で実現できました。
なぜこの構成が“無理しない現場DX”なのか
この方法の良いところは、大がかりでないことです。
- 表示灯に大きな改造を加えない
- 高価な専用監視システムを導入しない
- まずは1台から試せる
つまり、既存設備に負担をかけず、
小さく始められる構成です。
表示灯の遠隔監視というと、
大規模なIoTシステムを想像するかもしれません。
しかし実際には、
「色を読み取り、Wi-Fiで送る」
それだけの仕組みでも、
現場のムダを減らすには十分でした。
こうして、
表示灯を遠隔監視するための基本構成が固まりました。
表示灯遠隔監視システムの構成と必要機材
結論から言うと、表示灯の遠隔監視は意外とシンプルに構築できました。
ここでは、実際に構築した表示灯遠隔監視システムの構成を紹介します。
難しい制御盤改造やPLC接続は行っていません。
あくまで「表示灯の光を読み取る」ことに特化したシンプルな構成です。
全体の流れは次の通りです。
- 光センサで表示灯の色を検知
- M5Stackでデータを取得
- Wi-Fi経由で別建屋へ送信
- 受信側で状態を表示
シンプルですが、目的は十分に達成できました。
使用した機材一覧(M5Stack・センサなど)
今回使用した主な機材は以下の通りです。
- M5Stack ATOMS3本体
- 光環境センサ
- 電源アダプタ
- USB-C接続ケーブル
- 固定用テープ・簡易ステー
特別な産業用機器は使用していません。
比較的入手しやすい部材で構成しています。
まずは1セット構築し、
安定動作を確認してから展開する形にしました。
(M5Stack ATOMS3本体は別の建屋用としてもう1個準備しました)
表示灯の色判定方法(緑・赤の判別)
表示灯の色判定は、光センサの取得値を使って行います。
例えばRGB値が取得できる場合、
- G(緑成分)が一定値以上 → 緑点灯
- R(赤成分)が一定値以上 → 赤点灯
といった形でしきい値を設定します。
実際には、周囲光の影響を受けるため、
- センサ位置の微調整
- 外光を遮る簡易カバー
- しきい値の実測調整
といった地道な調整が必要でした。
ここは一度設置して終わりではなく、
現場に合わせて微調整する工程になります。
別建屋へ情報を送る方法
データの送信にはWi-Fiを使用しました。
監視する設備側のM5Stack側で判定結果をデータ化し、
社内ネットワーク経由で別建屋の受信側へ送ります。
別の建屋にある受信側のM5Stackにはソケット通信を使用して送信しました。
送信内容は非常にシンプルです。
- 正常
- 異常
- 停止
といったステータス情報のみ。
映像ではなく“状態データ”にしたことで、
- 通信負荷が軽い
- システムが安定しやすい
- 拡張しやすい
というメリットがありました。
実際の設置方法と固定の工夫
設置はできるだけ既存設備に負担をかけない方法を選びました。
表示灯のすぐ近くに光センサを配置し、
両面テープや簡易ステーで固定します。
重要なのは、
- 表示灯に直接触れない
- メンテナンスの邪魔にならない
- 取り外し可能にしておく
という点です。
工場設備は改造すると承認や管理が複雑になります。
そのため、「元に戻せる構成」を意識しました。
この“無理をしない設置”が、
継続運用につながるポイントだと感じています。
今回使用したのはM5Stack ATOMS3です。
Wi-Fi内蔵・小型・価格も比較的手頃で、表示灯監視用途には十分な性能でした。
表示灯を遠隔監視して得られた効果
表示灯の遠隔監視を導入してみて、
最初に感じたのは「静かな変化」でした。
劇的に工場が変わるわけではありません。
しかし、日々の小さなムダが確実に減っていきました。
ここでは、実際に感じた効果と注意点を整理します。
1日あたりの移動時間削減効果
表示灯を確認するための移動は、
1回あたり数分でした。
仮に、
- 1回5分
- 1日4回確認
とすると、それだけで20分になります。
遠隔監視を導入してからは、
異常時以外は移動する必要がなくなりました。
結果として、
- ムダな往復が減った
- 作業の中断が減った
- 確認の心理的ハードルが下がった
という変化がありました。
「行かなくていい」というだけで、
想像以上に余裕が生まれました。
心理的な安心感の変化
もう一つ大きかったのは、安心感です。
これまでは、
「今、止まっていないだろうか」
「異常が出ていないだろうか」
という不安がどこかにありました。
遠隔で状態が分かるようになると、
必要なときにすぐ確認できます。
常に映像を見続ける必要はありません。
状態だけが分かれば十分でした。
表示灯の遠隔監視は、
時間だけでなく“気持ちの負担”も軽くしてくれました。
導入時に気をつけるポイント
一方で、注意点もあります。
まず、光センサは外光の影響を受けます。
設置環境によっては誤判定が起きる可能性があります。
そのため、
- 設置位置の検証
- しきい値の調整
- 実際の稼働状況でのテスト
は丁寧に行う必要があります。
また、ネットワーク環境も重要です。
Wi-Fiが不安定だと、通知が遅れることがあります。
最初から完璧を目指すのではなく、
まずは1台で試し、改善しながら広げていく。
その進め方が、結果的に安定した運用につながりました。
まとめ|表示灯の遠隔監視は小さなIoT改善から始められる
表示灯の遠隔監視というと、
大規模な設備投資や本格的なIoT導入を想像するかもしれません。
しかし実際には、
- 表示灯の「色」を検知する
- 状態をデータとして送る
- 必要なときに確認できるようにする
それだけでも、現場のムダは確実に減らせます。
今回構築した仕組みは、
M5Stackと光センサを使ったシンプルなものです。
特別な制御改造もしていませんし、
高価な産業用システムも導入していません。
それでも、
- 移動時間の削減
- 作業中断の減少
- 心理的負担の軽減
といった効果を実感できました。
重要なのは、最初から完璧を目指さないことです。
まずは1台。
まずは1設備。
小さく試し、動かしながら改善する。
表示灯の遠隔監視は、
その第一歩として取り組みやすいテーマだと感じています。
もし現在、
「設備を見に行く時間がもったいない」
「遠隔で状態を確認できたら便利だ」
と感じているなら、
小さな構成から試してみる価値は十分にあります。
この記事が、現場改善のヒントになれば幸いです。
なお、今回の表示灯遠隔監視と同じように、「確認のための移動」をなくす改善として、部品準備の自動通知を行った事例もあります。
2Fと1Fを往復していた確認ロスを、Raspberry Piで自動化した実践例については、こちらの記事で詳しく紹介しています。